2022.6月号

 

 「共感疲労」

 

 3年ぶりに行動制限のないゴールデンウィークを迎え、明るいニュースもチラホラと出てきましたが、先月23日に起きた知床観光船の沈没事故や、早期に終わると見られていたロシアによるウクライナ侵攻は泥沼の様相を呈しており、世の中はまだ暗いニュースが多いと感じています。

 こうした暗いニュースを毎日のように見聞きするうちに、怒りや悲しみの気持ちが募り、落ち込んだり、イライラしたりとすることを「共感疲労」と言うそうです。これは心理学で使用されている言葉で、元々は医療や介護で働く人たちが、病気等で苦しむ人たちの世話をしているうちに、自らも苦しくなり疲れてしまう現象だと言います。

 戦争で苦しんでいる人たちがいるのに、自分たちは美味しいものを食べていていいのか、笑っていていいのか、何もしなくていいのかと自分を責めて体調を崩したり、情緒不安定になったりする人はこの共感疲労になっており、東日本大震災の際にも、こうした共感疲労になった人が多く見られたといいます。

 戦争の場合は自然災害よりも複雑で、震災ならば被災者にボランティアをしたり、義援金を送ったりと応援をすることに迷いはありませんが、戦争の場合「がんばれ」と応援することは、戦争が続くことで、被害にあう人が日々増えてしまうことになるため、共感すればするほどストレスが溜まります。

 精神科医は戦争報道やSNSを必要以上に見ないようにし、自分の生活と向き合うことで、共感疲労は軽減されると言います。働いている人は働き、学生は学び、子供は遊ぶ。美味しいものを食べて、笑える時は沢山笑う。要は「今を生きる」ということが今我々に出来ることなのかもしれません。それでも共感疲労になった時は、自分の身近にいる人たちを避難民だと思い、親切にすることで、自分の幸福感も高めることが出来ます。

 残念ながらこの戦争は短期間で終わる見込みはなく、まだ半年以上、下手をすると数年続くと推測する人もおり、共感疲労との戦いはまだ始まったばかりです。

 他人を守るには、まずは自分を守らなければなりません。まだまだコロナの影響も続いておりイベントやお祭は中止が続きますが、この2~3年で新たな趣味を持った人も多いかと思います。ニュースやSNSばかりを見て悲観的になるのではなく、今を生きる、今を楽しんでいきましょう。

                                             魚谷 直世 記

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