2019.6月号
「排除より配慮」
先月、東京の池袋で87歳の男性が運転する乗用車が信号を無視し暴走、歩行者を次々にはね、自転車に乗っていた主婦と子供が亡くなり、その他にも8名が重軽傷を負いました。運転していた男性は「アクセルが戻らなくなった」と話をしていますが、その後の報道では1年前から足が悪く、杖をついていたことや、駐車がうまくできずに、同じマンションの住人に運転を辞める話をしていたとのことで、運転ミスの可能性が高いと言われています。又、この事故から2日後には、まだ高齢者と言うには早いのですが64歳の男性が運転する市営バスが横断歩道の歩行者2名をはねる死亡事故が起こっており、高齢者による死亡事故が続けて起こりました。
一昨年から道路交通法が改正され高齢者の免許更新時には認知検査が義務化され、認知症と判断された場合は免許停止か取消になるとのことですが、今回の池袋事故の場合、運転者は認知症ではないとされており、その診断結果が運転への過信に繋がったならば、皮肉な結果となります。
実際のところ、高齢者の事故原因は認知症だけではなく、加齢による判断力や技能の低下によるところが大きいと思いますが、一方で国は高齢化が進むなか、働く意欲のある高齢者の就労を増やし、公的年金制度等の社会保障を財政的に維持するために、60~64歳の就業率を2020年に67%まで引き上げるとの数値目標を掲げており、戦後最大の人手不足と言われている今、様々なサービスを維持するには高齢者にも働いてもらわなければならない時代になってきました。
しかし、それは高齢者が通勤や仕事で自動車を運転する機会を増やす結果となります。交通事故のニュースに「高齢者」という言葉がでてくると「だから高齢者は…」と反応する人もいますが、もう少し冷静に問題を見る必要があるのかもしれません。
認知症の人は別として、高齢者の多くは自分の心身の衰えをよく自覚しているうえ経験も豊富なので、慎重な運転を心掛けている人が多く、統計を見ても60代のドライバーは20代よりも交通事故を起さないと出ています。
交通機関の少ない、我々地方に住むものにとって車はライフライン、自動運転等システムで運転をアシストしてくれる車を高齢者には優先的に配備する等、排除よりも配慮を大切にしたいですね。
魚谷 直世 記
今回の店主雑感のご意見、ご感想等お願いいたします。