2019.1月号

「背水の陣

 

 政府与党が今国会の最重要法案と位置づけてきた改正出入国管理法が8日の参院本会議で賛成多数で可決、成立しました。この改正案は深刻な人手不足への対応として、外国人労働者の受け入れを拡大するもので、5年間で最大34万人あまりの外国人労働者の受け入れを見込んでいるとのことです。

 これまでは日本で働く外国人は医師や弁護士等の専門性の高い17資格のみに限られており、高い専門性を必要としない労働は外国人には認められておらず、根室でも水産加工場などで働く外国の方々は技能実習制度を利用していましたが、今回の新制度では日本語能力や仕事をするのに必要な試験を受けて「特定技能」があると認められれば、はれて就労資格がとれるようになり、これにより、飲食業や建設業、農業、漁業、介護などの日本の若者には人気がない分野でも外国人労働者がどんどん増えることになります。

 毎度のごとく今回の法改正でも国会ではプロレス大会からクイズ大会と与野党が激しくぶつかり合いましたが、野党の批判に対しどれくらいの国民がそれを共感できたのかは疑問を感じました。有効求人倍率が44年ぶりの高水準を記録する中、人手不足による倒産は前年比4割増で増え続けており、早急に対応を迫られる中、野党は「データを出せ」「技能実習生の失踪は問題だ」等々わかりきった原則論を繰り返すのみで、原則は大切なことですが、原則が変化している現実から目をそむけ、安全なところから原則論だけを言っても全く説得力はありません。

 根室の水産加工場のように技能実習生に頼らざるを得ない、業界が置かれているデフレ構造からどう脱却させるのか、地方現場の苦悩を知り、その上で実現しうる解決策を提案していく。それが政治ではないかと思います。いかにも都会的で世論受けそうな原則論ばかりを叫び続ける、これでは危機感に押されて、問題を説明せずに制度改革を急ぐ政府与党の方が比較的マシに見えてしまうのも仕方がありません。

 いずれにせよ、この法案によりハングリー精神みなぎる外国人は日本にやってきます。過去20年アメリカのシリコンバレーで起業した半数以上が移民とのこと。海と言う外堀に囲まれた日本でしたが、背水の陣で乗り込んでくる外国人に日本の若者はどう対応していくのか。

                                           魚谷 直世 記

 

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