2018.7月号

「1インチの勝負

 

 アメリカ映画で「エニイ・ギブン・サンデー」という映画はご存知でしょうか?1999年公開のアメフトを題材とした映画となり、近頃は日大アメフト部の危険タックル問題がニュースで毎日のように流れていたため、また見たくなり、久しぶりに見直していました。

 名優「アル・パチーノ」演じるヘッドコーチがクライマックスで選手たちに檄を飛ばすシーンが有名で、私の中ではスピーチが最高に痺れる映画となります「人生でもフットボールでも、我々が犯す間違いは気づかぬほど小さい。フィールドのあらゆる部分、人生のあらゆるところに存在する、たった1インチが勝負を分ける。だから、我々はその1インチに全力を尽くす。周りを見ろ!その1インチを共に戦う仲間がいる。無駄に生きるな、熱く死ぬんだ!」アル・パチーノの熱演もあり何度見ても勇気づけられるシーンなので、何かに挫けそうになった時はぜひ見て頂きたい映画となります。

 「やらなきゃ意味がないよ」と耳元でささやく日大のコーチとは違い、自らの思いを、自分の言葉で伝える、それが選手にも伝わり、チームとしてのポテンシャルを引き出していく、それがリーダーシップだと思いますが、今回の問題では最初の1インチ、初動の拙さから、問題が雪だるま式に大きくなり、今や日本大学の経営体質そのものまでが批難の対象となりました。

 「相手のクウォーターバックを潰してこい」このような指示はぶつかり合いが激しいアメフトでは珍しい指示ではないと言いますが、その責任を選手に押し付けてしまう。もしも、監督が最初の段階でこの指示を認めていたならば、ここまで問題は大きくならなかったと思います。日大には「危機管理学部」という学部がありますが、危機管理において最も重要なのは初動対策であり、初動を間違えると、その信頼回復には起こした事態よりも、大きな労力とお金、時間を必要とすることになると、これ以上のない実地教材となってしまいました。しかし、学生達にはチーム名「フェニックス」の通り、大人の勝手な事情になんか負けずに「不死鳥」のように復活してほしいものです。

 冒頭のこの映画、私のもう一つ好きなシーンが、妻に「今度の試合を最後に引退しようかな」と言ったところ、妻から熱い抱擁かと思いきや「アンタはまだやれるわよ!」と強烈な平手打ち、もし私が同じことを妻に言ったならば…

                                            魚谷 直世記

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