2016.3月号

「安さと危険

 

 もう先月のことになりますが、私も大好き「ココイチ」で廃棄されたビーフカツが格安スーパーの店頭に並んでいるのをココイチのパートで働く女性が発見し、廃棄処分を委託した業者の横流しが発覚しました。この商品は異物混入の疑いがあるとのことで廃棄されたものですが約5,400枚が横流しにより市場に販売されていたとのことで、異物の樹脂は直ちに健康被害を及ぼすものではないものの、廃棄の際に冷凍状態から一度溶けており、傷んでいる可能性もあるといいます。どのような気持ちでこれを転売したかはわかりませんが、ココイチからの廃棄料と転売した商品代金、1度で2度おいしいと思い、お金のためだけに行った結果ならばこの廃棄業者にはもう商売をする資格はないと思います。

 このように近年増加傾向にある価格競争が原因と言える事件は、今月発生した軽井沢のスキーバス転落事故が最も悲惨な例といえます。乗員乗客合わせて15人が死亡し、多くの負傷者が出たこの事故は、バス会社の杜撰とも言える管理体制が招いた結果ともいわれ、報道によると国が定めた最低料金26万円を大幅に下回る19万円で運行を請け負っていたとのことで、そのような価格を出さなければ、受注することが出来ないスキーツアーの市場だったと言われており、この問題は今も業界の体制に波紋を呼んでいます。このような近年の過激ともいえる価格競争は会社の収益を悪化させ地方の中小企業を疲弊させるだけでなく、そこに働く従業員や、お客様の「安全」、企業としての「社会的責任」を犠牲にして行っている場合が多く、事故を誘発する一因となっています。

 世の中の景気回復が遅れる中、一円でも安く抑えたいと思うのは消費者側の当然な考えではありますが、これらの事件により過剰な「安さ」というのは「危険」と隣り合っているものだと改めて認識される結果となりました。これら事件は各業界の規制緩和が始まった2000年頃より徐々に増え続けており、今後も陸海空様々な場面でこういった事故が更に増えていくと思われます。それに対し我々消費者側の対応手段は、商品の適正価格を把握し、極端な安値に対しては警戒感を持つ必要があるのではないかと思います。

                                          魚谷 直世 記