2015.6月号
「矛盾 」
桜も散り、夜も大分暖かくなってきました。仕事終わりにビールで一杯がおいしい季節ですが、そんなささやかな楽しみに水を差すような酒税法改正案が国会に提出される予定です。この改正案は大手量販店やディスカウントストア等による安売り競争に歯止めをかけるため、酒税法を改正しようとするもので、客寄せのため儲けを度外視したような価格で酒類を販売することを禁止するため、販売の取引基準を法制化し、違反した業者には罰金や酒類販売免許の取り消し等を盛り込むという与党の本気が伝わる改正案で与党多数が賛成しているため法案が成立する可能性は大きいとのことです。
アベノミクス第三の矢と言われる成長戦略には「規制緩和によって企業や国民が挑戦しやすい世の中を目指す」と書いてありましたが、矛盾するような今回の法案の背景には、酒類販売割合が平成7年には79%を占めていた「街の酒屋さん」である一般販売店が、大手量販店との競争によって平成24年には31%にまで低下しており、このままでは酒税の徴収に影響が出るとのことから今回の法案提出の流れとなりました。
効率よく税金を徴収するため、街の酒屋さんを守ると言うのであれば、我々が販売している「ガソリン」も1L当たり、ガソリン税53.8円、石油税2.54円、更にこれらの税金にも消費税がかかる2重課税によって、その納税額は酒税を上回り、小売価格も大手量販店との競争から、ほぼ利益がない状態が続いており「従順なる税金ポンプとして我々の業界も守って下さいよ」と愚痴も出てしまいます。しかし、今回の酒税法改革で一番メリットがある所は「街の酒屋さん」ではなく、規制緩和から資本力による価格競争で酒類販売量最大のシェアを獲得した大手量販店ではないかと思います。酒類の価格が底上げされたところで、全体的な販売量や業界シェアは今から変わることはなく、大手量販店は堂々と競争なき価格でお酒を売ることが出来ます。世の中は決して公平ではなく、力のあるものが有利なように出来ており、これにどう対処するかが商売のおもしろいところかもしれませんね。
魚谷 直世 記