2015年4月号
「第三の矢 」
アベノミクス「第三の矢」となる規制緩和の本丸「農協改革」は生産者である農家の経営自由度を促進させ、発展を促すというものです。かつては小泉首相の時代にも農協の金融・共済・経済の事業を郵政3事業と同様に分割する提案がありましたが、いわゆる農林族議員からの反対で先延ばしになった経緯があり、当時の報告書では農協の資材購入や農産物販売は高コスト体質で国際競争力が低く、不採算部門からの撤退を求めていました。農産物はもちろん各種保険や金融商品、電化製品、住宅、不動産等まさに「ゆりかごから墓場まで」日本唯一の万能組織である農協は、縦割り硬直化した組織で各分野の積極的な連携を生かしきれない印象がありますが、日本の農業を守る目的の組合のため、法人税の優遇、独占禁止法の除外、固定資産税の免除、巨額な各種補助金等、民間企業に比べ様々な優遇措置があり、これにより安価な事業やサービスを提供しております。この事業は組合員たる農家の利用だけでなく、低額な出資により一般の人も準組合員として農協事業を利用することが可能で、今では農家の正組合員よりも農家ではない準組合員の方が多いという、本来の目的を失っているようにすら感じます。
この農協改革は日本よりも海外での注目度が高く、投資家はTPPと農協改革の成否により日本株は大きく値を動かすと見ており、GDPの比率にして1%にも満たない農業団体がこれからの日本経済を左右している状況となっています。
世界一レベルが高いと言われる日本の外食産業、それは参入規制が低く世界一競争が激しいからと言われていますが、規制により農地すら自由に取得出来ない規制だらけの日本の農業は国際的な競争力は低く、国内の食料自給率さえ40%を切り減少傾向にあるこの現状で、世界の人口は日本と違い際限なく増加しており20~30年後と近い将来に食料が安価で安定的に他国から輸入される時代は終わりを迎えます。現状通りを見て見ぬふりするのは簡単ですが、農協改革は我々の未来にとって重要な転換期になるかもしれません。
魚谷 直世 記