2015.2月号
「転換期 」
デジタルカメラにスマートフォン等ここ数年、写真を撮るのに写真用フィルムを見かけることはなくなりました。2012年にはかつて全米90%のシェアを持つ名門フィルムメーカーコダック社が経営破綻しましたが、一方で日本トップシェアを誇るフィルムメーカー富士フィルムは医薬品、化粧品等の異業種に進出し約10年で倍増とも言える成長を遂げています。フィルム事業の売上ピークの2000年頃、富士フィルムはフィルム関連事業で売上高の54%を占めていました。1996年頃よりデジタルカメラ化が進んでおりましたが、当時の社内では新興国での需要はまだあると考えており他業種への投資は進んでいませんでした。しかし、予想以上に世界的なデジタル化は早く同社においてもフィルム部門の売上高は毎年200億円ペースで減少したと言います。祖業であり、社名にのる看板商品でもある写真フィルム事業を捨てる勇気は並大抵のものではないと思いますが、積極的に他業種に進出することで昨年、全世界を恐怖に陥れ、まだ治療薬が確立していないと言われた「エボラ出血熱」に対し有効な可能性があるインフルエンザ治療薬「アビガン」を発売し世界中からその姿勢を評価されることとなりました。今のところ「アビガン」が同社の成績に与える影響は軽微とのことですが、人類の危機に立ち向かう富士フィルムの姿は不況にあえぐ日本企業に勇気を与えたのではないでしょうか。
ナオエ石油も会社名に石油と入っており、主だった売上は石油ガス類が締めておりますが、人口の減少や低燃費技術の向上又、先日ニュースとなりましたトヨタの水素電池車特許の無償提供により一気に水素電池車が増える可能性もあり、石油の需要は今後増えることがなく、フィルムと状況が似ています。
コダック社を窮地に立たせたデジタルカメラを開発したのは実はコダック社であり、これから起こりうる写真の未来を的確に予測していたと言われています。変化に抵抗する紋切り型の日本企業のようにコダック社が行動し、柔軟な米国企業のように行動した富士フィルム。我々は富士フィルムのようになりたいものです。
魚谷 直世 記