2014.9月号
「風船が動くとき」
ある心理テストの問題で「風船が空に飛んでいます。その風船は動きが急に早くなりました。何故だと思いますか?」という質問で、日本人と欧米人の答えが違うとのことです。
日本人に多い答えは「風が吹いたから」しかし、欧米人に多い答えは「風船から空気が漏れたから」とのこと。色々と諸説あるものの、日本人の場合は「人や物というのは周りの影響を強く受ける」と考えており、それに対し欧米人の場合は「人や物はそれ自体が行動をコントロールしている」と解説されています。確かに欧米人の考え方の基本は「個人」であり、我々日本人は「会社」や「家族」といった団体の調和を第一として考える傾向にあります。これは東洋文明の始まりである古代中国の思想と、西洋文明の始まりでもあるメソポタミア文明のギリシャ哲学の違いと考えられ、現代にも脈々と受け継がれております。特に今の男女の社会構造にも大きく影響を受けていると思われており、先日受けたある講演会で少子高齢化による、就労人口の減少、つまりは働く若い男性が少なくなってきているための対策を聞かせて頂きましたが、女性の講師が「働く男性が少なくなっているのならば、女性の就労を増やすべき。欧米の女性就労率の高さと比較して、日本人女性の社会進出が進まないのは我々のような男性経営者が不勉強だから」とのような言い方をされていました。就労人口を増やすために女性の労働環境を改善するのは大いに賛成し、働く女性が増えることは、これから日本が成長する上でも絶対に必要なことだと理解はしますが、欧米と比較して日本女性の社会進出が進みにくいのは、男性が女性の社会進出を妨害しているというよりも、日本人と欧米人の思想や文化の違いが一番大きいと個人的には考えています。女性も男性も「個人」と捉える欧米人と、「会社」「家族」という組織で考える日本人の場合、組織は各自の役割があり、必然的に得意分野を受け持つことになるため、今の日本の社会構造になっているのだと思います。欧米がやっていることすべてが正しいわけではなく「温故知新」で受け継いだ我々の文化を見直すのも、これから日本の未来を考えていく上で大切なことではないでしょうか。
魚谷 直世 記